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時は黒船来航の翌年、処は品川宿のはずれ・・・
名うての盗賊「太郎坊玄八」は、赤子を腕に抱きながら、月明かりを避けるように盗人旅籠に飛び込んだ。
月日は流れ・・・十才となったその赤子、ちょび安は、宿場女郎、客の悪党連中に可愛がられながら、
盗人旅籠〈木菟や〉の使い走りとして、元気に毎日を過ごしていた。
そんなある日・・・椿山香月斎と名乗る旅の俳諧師が〈木菟や〉を訪ねてきた。
この男、俳諧師とは名ばかりで、実は人買いの小悪党、鼬の清吉という、玄八の古い知人であった。
「太郎坊が来たら、私が逢いたいと言っていたと伝えておくれ」そう伝言を残し、〈木菟や〉を後にする香月斎。
それは、十年前に起こったある事件と、ちょび安を巡り、それぞれの運命を大きく動かして行く出来事の始まりであった。