DESIGN FOR THEATERGOING
作家手記
2006年の夏から、南仏のマルセイユという街に1年住みました。
人口の大半を北アフリカ系の移民が占める街です。
永住予定ではないにせよ「ガイジン」として生活するのはこういうことか、と日々思わされました。
やたらとニイハオと声をかけられ、契約寸前のアパートが「日本人には貸したくない」という理由で断られ。
公演準備と生活に疲労困憊してコインランドリーで呆然と座り込んでいたときに、同世代くらいのフランス人に声をかけられました。
「日本人? 王子様に子供が生まれたね、おめでとう。アベ首相はまわりの国とうまくやれないみたいだね」
それをききながら、ああ、日本も遠くない将来にマルセイユのような移民問題に直面するのだろうな、ということをぼんやりと考えたのです。
しかし2016年にこんな有り様になっていようとは。
現実がすっかり追いついてしまっている状態で、「日本はこういう問題に直面するかもしれない」という危機感を改めて語る意味があるのか、と思う反面、初演時にはなかった「リアル」があるかもしれません。
一観客としてとても楽しみにしています。
夏井孝裕